高校生の皆さんへ・卒業論文について

高校生の皆さんへ・卒業論文について

■応用電磁気学 研究室 / 齊藤 兆古 名誉教授

◎ テーマ : 高感度磁気センサの研究開発
私達の研究室では飛行機や自動車等の安全性を確保する非破壊検査のために高感度磁気センサの研究開発を行っています。高感度磁気センサが研究室で試作され、計算機シミュレーションなどで原理検証と最適設計を経て、最終的に製品になる直前のプロトタイプが製作されるまでを説明します。
①右図の(a)は研究室のみんなが一緒に考えた新しい高感度磁気センサの原理を検証する学生のハンドメードで作られた試作センサです。

(a)原理検証用試作センサ
②同図(b)は、研究室のみんなで考えた磁気センサが理論通りに高感度に働くかをシミュレーションするためのモデルです。

(b)シミュレーションモデル
③同図(c)は、シミュレーションによる電流分布の可視化結果です。このように電流や磁界分布などを計算機で可視化し、最適な設計データを求めます。

(c)電流分布の計算機シミュレーション
④同図(d)は、研究室のみんなが知恵を絞って開発した高感度磁気センサのプロトタイプです。現在、このプロトタイプセンサは既存のセンサのどれよりも高感度なチャンピオンデータを維持しています。

■情報電磁波工学 研究室 / 中野 久松 名誉教授

◎ テーマ : 新しい機能を持つアンテナの開発
概要:
アンテナからの電波の回転方向(左回転あるいは右回転)は、アンテナの巻き方によって決まってしまう。1つのアンテナでは、両回転を得ることはできない。もし、両回転が得られるなら、通信機能は2倍になる。このようなアンテナの研究はきわめて少なく、実用化されたものは皆無に近い。卒業論文では、新しい概念のもとに、機能向上をはかる。
新しい概念 :
自然界では、波の進む方向(位相の伝達方向)とエネルギーの進む方向は同じである。もし、「両者の方向を互いに逆にする仕組み」をアンテナに追加できれば、機能は倍増する。図1は、機能増加を目的として創られたアンテナの1例である。正方形の金属アームが誘電体基板上に印刷されている。

図1. カールアンテナ
実験:
図2は、図1のアンテナが2つの電波(左回転電波と右回転電波)を放射している様子を示している。このようなことは従来のアンテナでは実現できない。

図2. 放射の形

■半導体デバイス工学 研究室 / 中村 徹 教授

◎ テーマ : 窒化ガリウム(GaN)半導体デバイスの高性能化の研究
概要:
アンテナからの電波の回転方向(左回転あるいは右回転)は、アンテナの巻き方によって決まってしまう。1つのアンテナでは、両回転を得ることはできない。もし、両回転が得られるなら、通信機能は2倍になる。このようなアンテナの研究はきわめて少なく、実用化されたものは皆無に近い。卒業論文では、新しい概念のもとに、機能向上をはかる。
デバイス構造の特徴:
GaNにp型およびn型導電層を作る技術は当研究室で世界に先駆けて研究・開発している。図に示すように、この技術を用いて電極領域直下に超低抵抗層を形成してデバイスの微細化と高効率化を両立する。

図. GaN トランジスタの断面構造
◎ テーマ : 炭化シリコン(SiC)基板上のグラフェンデバイスの研究
概要:
炭素(C)原子が単層で2次元配列されて出来ているグラフェンはエネルギーバンドギャップがゼロで将来の半導体材料として期待されている。このグラフェン膜をSiC基板上に形成して新しい構造のトランジスタを形成すれば広い応用が期待される。卒業論文では、グラフェン膜を形成し、3次元に配列されたデバイスを創造して試作評価する。

デバイスの特徴:
SiC基板内のトランジスタの上面にグラフェン膜を形成してトランジスタを作り、3次元構造のトランジスタ特性を作って評価する。

■半導体システム工学 研究室 / 安田 彰 教授

◎ テーマ : パラメトリックスピーカにマルチ・ビットデジタル直接駆動技術を用いた研究(超音波を用いた超高指向性スピーカの実現)
概要:
私たちのいるこの生活空間では、あらゆる音が飛び交っている。駅のアナウンスの音、パチンコ屋やゲームセンターでの自動ドアが空いた時の騒音など、その情報が必要なひとにとっては、もちろん聞こえてほしい音であるが、情報が不要なひとにとってはただの騒音である。そこで注目されているのが、指向性をかけて聞かせたい場所にだけ聞こえるという性質を実現できる特殊なスピーカ、パラメトリックスピーカがある。直進性にすぐれた超音波を搬送波として原音でAM変調をかけて高い音圧で出力させ、空気の非線形性による自己復調によりあたかもその空間だけに音がきこえるような現象がおこる。
 このスピーカにデジタル直接駆動型スピーカの技術を応用させ、フル・デジタル回路でマルチビット信号をパラメトリックスピーカに直接駆動させることを試みる。
提案手法:
超指向性を実現できるパラメトリックスピーカをデジタル信号で直接駆動する.デジタル信号で直接駆動することで,パラメトリックスピーカを容易にかつ高精度に駆動することを実現する.デジタル信号で40 kHzの搬送波を音声信号で変調し,この信号を⊿Σ変調器でパラメトリックスピーカの個数に応じた信号に変換する.また,この信号をノイズシェーピング・ダイナミック・エレメント・マッチング法でスピーカの誤差の音声への影響の無い周波数に移動させる。

図1. 提案手法のブロック図
シミュレーション結果:
提案手法(赤)では,パラメトリック各スピーカに誤差があっても40 kHzの超音波を正確に再現している.一方,従来手法(緑)では,パラメトリックスピーカの誤差により全帯域に渡って雑音が生じていることが分かる。

図2. 出力スペクトルのシュミレーション結果(横軸:周波数,縦軸:雑音,信号レベル)

■機能素子工学 研究室 / 柴山 純 教授

◎ テーマ : 遺伝的アルゴリズムを用いた1×4多モード干渉パワー分割器の出力改善
概要: 多モード干渉(MMI: Multimode Interference)デバイスでは、電磁波の通り道を広くすることによって複数の高次モードを発生させます。それらをうまく干渉させることで様々な機能を持たせることが出来ます。本研究ではひとつの入力を4分割するMMIパワー分割器を検討しました。図1は最適化前の1×4 MMIパワー分割器の解析結果です。出力は4分割されていますが、出力が細かく不安定に波打っている様子がわかります。出力を安定させるためには、多モード干渉領域に空隙(穴を空けること)を設けることが一つの改善策として知られています。しかしながら、多モード干渉領域のどの部分に空隙を入れれば良いか、簡単にはわかりません。
遺伝的アルゴリズム(GA)による最適化: 
GAとは生物の進化過程をコンピュータ上で模倣し、最適な解を見つけ出す計算アルゴリズムです。まず、いくつかの個体を生成し、それらの遺伝情報を個体間で交叉させたり、突然変異させたりして、よりよい個体を次の世代に残していきます。望む結果が得られるまでこの計算を進めていきます。図2は空隙を4ヶ所導入した際の、GAによる最適化後の結果を示しています。白い部分が空隙です。出力がより安定して取り出せていることがわかります。本研究室では様々なデバイスの最適化にGAを利用しています。