QRコードを発明した卒業生の原昌宏さんの紹介記事が掲載されました。

2014/10/16

株式会社デンソーウェーブ AUTO-ID 事業部 技術2部 技術2室 室長 原 昌宏 さん

プロフィール

1957年東京生まれ。

法政二高を経て1980年法政大学工学部電気工学科卒業。同年日本電装株式会社(現:株式会社デンソー)に入社。1994年にQRコードを開発し、1999年JIS規格、2000年ISO規格に認定。2001年分社化に伴い株式会社デンソーウェーブに転籍。2004年より現職。2002年R&D 100 Awards(米国)、2004年モバイルプロジェクトアワード最優秀賞、2007年日本イノベータ大賞優秀賞、2012年グッドデザイン賞Best100、2014年欧州発明家賞ポピュラープライズ賞など、受賞歴多数。

自ら生み出したQRコードのさらなる進化に取り組む

携帯やスマートフォンのカメラをかざすと、瞬時に情報が表示されるQRコード。この四角い小さな白黒のドットパターンを開発したのが原昌宏さんです。日本で初めて欧州発明家賞ポピュラープライズを受賞し、さらなる規格の進化を目指しています。

バーコードに限界を感じ2次元コード開発に着手

法政卒業後、新しい技術開発に携わりたいと音声認識などの新技術開発にも積極的だったトヨタ系の日本電装(現デンソー)に入社しました。ところが、電子回路を学んできたのに入社早々上司から「これからはソフトの時代だ」と言われ、ソフトウェアを独学することになりました。最初に命じられたのが、バーコード読み取り装置の開発でした。当時、バーコードは日本ではほとんど知られていませんでしたが、アメリカでは既に普及しており、アメリカから帰国した上司が持ち帰ったチューインガムのバーコードを頼りに、スーパーなどで使えるようなハンディータイプの光学的な読み取り装置の開発を始めました。2年ほどかけて完成させたところ、セブン・イレブンに採用され、そこから一気にバーコードが広まっていきました。ただ、バーコードに入る情報は、せいぜい数字20桁です。情報が増えると複数のバーコードを並べるため、読み取りに時間がかかり、作業効率にも影響が出始めていました。そこでバーコードに変わる新しいコードを一から開発することにしました。日本語のかなや漢字も入るようにしたいと考え、大容量の情報を入れることが可能な2次元コードを採用することにしたのです。

魔法の比率「1対1対3対1対1」

(A)基本的なQRコード。右下を除く3つの角に「1:1:3:1:1」の独特なパターンがあるため、どの向きで読み取り装置にかざしても、高速に読み取れる。パターンが3カ所なのは、コードの天地を区別するため。最大で数字約7,000桁、かな漢字1,800文字が入る。このQRコードで株式会社デンソーウェーブウェブサイトの「QRコードドットコム」にアクセス可。(B)写真や画像などを加えて、オリジナリティのあるQR コードを作成することも可能になっている。アメリカでも2次元コードが出始めていましたが、情報量重視で1つのコードの読み取りに2~3秒もかかります。これでは産業界で使えません。私たちは「いかに早く読み取れるか」をテーマに、全く新しい2次元コードを考えることにしました。コンピュータは、バーコードのような1次元の処理が得意です。そこで白黒の比率が特有なパターンがあれば、そこにコードがあると認識できるだろうと考えました。その比率を割り出すために、さまざまな雑誌や新聞を読み取っては黒と白の比率を出すという泥臭い作業を3カ月ほど続けました。その結果、ついに「1対1対3対1対1」という魔法の比率を見つけました。通常の文字や画像には、この比率で白と黒が並ぶことはほとんどなかったのです。2014年度の欧州発明家賞での授賞式にて。デンソーウェーブと豊田中央研究所のQR コードの開発チームが一般投票によって選ばれるポピュラープライズを受賞した。

同賞での日本から受賞者は今回が初

その比率がQRコードの3カ所にある模様です。その結果、1秒間に30個の読み取りスピードを実現することができました。ちなみにQRコードのネーミングは「Quick Response」に由来しています。QRコードは、トヨタのかんばん方式に採用されて自動車工業界、部品工業界に広まり、やがてJIS規格やISO規格にもなって、現在では世界中で使われています。特許は取得していますが、規格に沿って使用する限りはライセンスフリーにしてあります。より多くの人に使ってもらえるのは技術者冥利につきますし、優れた読み取り装置を作れば当社の売り上げも伸びます(笑)。

多様な視点が大切学生時代には多くの経験を

QRコードはその後も進化を続け、マイクロQRコードや、セキュリティー機能を持ったQRコードSQRC、写真や図版と合成できるQRコード、複写不可能なQRコードなどへと発展しています。今後は認証技術と組み合わせ、たとえばお札に入れて偽札を見分けるような使い方も提案していきたいと考えています。学生時代は、遊びといえば六大学野球を見にいく程度で、どちらかといえば真面目な学生でした。しかし、QRコード開発というイノベーションを起こすに当たって、多様な視点の大切さを痛感しました。ですから、後輩の皆さんには、専門分野の学業に限らず、他分野への関心も含めて可能な限りいろいろな経験を積み、幅広いものの見方を身に付けることを強くお勧めします。また、夢や志を持つことも大切です。私の場合、父親が技術者で特許を持っており、その父を超えたいというエネルギーがあったからこそ、さまざまな苦労を乗り越え、ここまで来られたのかもしれません。

(初出:広報誌『法政』2014年度9月号)thumb_image_831